冬の終わりを告げる花



卒業の季節、イメージする花といえば「桜」が主流だと思う。でも、僕がこの季節を思い出すのは雪柳。
僕の記憶の中で3月に咲いている花は決まって、あの白くて小さい雪柳だ。
きっと僕が卒業した学校の記憶が強い所為なんだろうとは思うけど、この季節まだ桜は咲いてくれない。
それに引き換え、雪柳はいよいよ満開の時期。

僕が卒業した学校は当時、学校の敷地を囲うように雪柳が植えられていた。
この季節は暖かい風が吹き込んできて白い雪のような花びらが散っていた。僕は始め、それを
掃除するというのがだいっ嫌いだった。細かくてはいてもはいてもきれいにならなかったからだ。
でも、見える限りに敷き詰めて植えられている雪柳が、一斉に風に揺れて花びらが風に舞う瞬間、
なんとも言えないものがあった。あの風景は一度見たら忘れられない。
そうやって、毎年毎年卒業生たちは雪柳の吹雪の中を去っていった。
そして、僕もその一人としてその学校を卒業した春、5ヶ年計画で学校の建て直しが開始した。
それと同時にたくさんの雪柳が刈り取られた。桜はすべて残したのに、雪柳は殆ど刈り取られた。
今では校門の付近にほんのわずかに残っているだけだ。敷地の周りには雪柳の代わりにフェンスが
張り巡らされている。母校に帰っても、もうあの一斉に風に舞う雪柳は見る事ができない。
そして、舞い散って在学生に手を嫉かせることももうないのだろう。

そんな記憶の所為か、卒業と聞く季節になると未だに雪柳を探してしまう。
桜の様に立派な幹になるものではないが、あの儚く散ってゆく花びらには引き寄せられる。
けれど、今年はまだ雪柳を見ていない。
雪柳は僕にとっては何だかとても親近感があって、特別な花だ。
知らない人は一度見てみて欲しい。あの花びらは本当に雪のように舞い散るのだ。
その風景を思い浮かべると、何故か僕は今でも不意に泣きたくなる。
雪柳は僕に冬の終わりを教えてくれる、切なくて優しい花なんだ。

1999/03/03




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