野良猫ムーチョ
〜心に吹く風〜
(絵詞集)
作/ヒロコ・ムトー 訳/弟子丸典子 絵/森田あずみ

何かを探していた
ずっと何かをさがしていた

お腹が一杯になったって
心が一杯になるわけじゃないんだよ


表紙に書かれたこの文章と『野良猫』という言葉、そして何かを言いたげな表情の猫のイラストが目について手に取った。パラパラとページをめくって読み進むうちに涙が溢れそうになって、いてもたってもいられずレジへ直行。
・・・これが『野良猫ムーチョ』との出逢いだった。

絵詩集と銘打っているけれど、これは大人向けの絵本だと思う。
大人になったからって人間、強くなれるわけじゃない。むしろ弱くなっていく。だからこそ、孤独や辛さ、悲しみや切なさに耐えられなくなって、恋をするという説もあるけれど、 必ずしもそんな相手が見つかるなんて限らないし、見つかっても孤独や切なさに囲い込まれてしまう時がある。
そんな時、そっと包み込んでくれる温かさや優しさがこの本には溢れている。

「心に吹く風」には『THE GOODBYE CAT(やさしさと愛を込めて)』と『STRAY CATS(さすらいの猫たち)』の2本が収録されていて、僕を泣かせた『THE GOODBYE CAT』が特にオススメです。

『THE GOODBYE CAT』の内容はまぁ、簡単に言うと野良猫のムーチョの一生なんだけど、これが何ともいえない表現で、辛さ・悲しみ・孤独・喜び・切なさ・悲しみ・楽しさ・嬉しさ。そして倖せ。全ての断片があるのだ。そう、それはまるで日々の暮らしの中に彷徨う人生と似ている気がする。
例えば、大切な存在を失った時の喪失感。落ち込み方、絶望感。愛する人を失った後のシーンの言葉を選ぶセンスというか、表現力はもう圧巻。ひとつひとつの場面がどれも、生きていれば1度は出くわすだろう出来事ばかりで・・・。あーやっぱりみんな同じようなことしてるのかなぁ〜。なんて、ある意味安心させてくれたりもする。
愛を求め彷徨うあたりとか、思わぬことにめちゃめちゃ救われてしまったりとか、更には年老いてやがてこの世から旅立っていく様まで。
喜びや悲しみや温かさも切なさもそこにある。それを乗り越えて尚、自分を倖せだと思えるムーチョがそこにいる。読みながら思わず僕は、かなりの号泣で顔をぐちゃぐちゃにしながら「そうだよねっ、そうだよねっ!」って何度も頷いてしまった。

そして、表紙に書かれている言葉で始まるのがもう1つの『STRAY CATS』。
表紙に書かれていた文章は、こっちの話の出だし。何かを探し求める流れ者(流れ猫?)の話。その流れ者への、町の猫たちからのメッセージ。なんだか、見失いかけてた優しさを見つけられそうな気がするお話。

更に、森田あずみさんが描く猫たち・・・。僕は猫が好きで、僕自身猫になりたいくらいなんだけど、こんなに僕を魅了した猫のイラストは初めてだった。リアルすぎず可愛すぎず・・。でも、猫の独特性が凄くでている気がする。本の作者のムトーさんは、このイラストを見ていて話を思いついたというのだから、それだけ森田さんのイラストには人をひきつけるチカラがあるんだと思う。

この本を読み終えた時、なんだか切ない優しさが伝わってきた気がした。そう・・・ただ優しい言葉がならんだだけの、癒し系の本とは違う。切なさと優しさと温かささが詰まってる。
どちらも素直に心に届く・・・ムトーさんの心に響く言葉たちと森田さんが描く猫たちが溢れた絵詞集。これこそ、大人になってから読むための絵本だと思う。だからこそ、エッセイも収録することにより、「絵詞集」として出版されたんだと思う。そして、ムトーさんのエッセイには「野良猫ムーチョができるまで」他、愛に溢れた言葉が綴られている。小さくて絵本サイズなんだけど、内容は盛りだくさん。

この本を知ってから僕はまえがきに書かれた通り、何かあったり辛い想いをしたり、悲しいときや淋しいとき、「野良猫ムーチョ」を思い出す。そして再び読んでは「頑張ろう」・・・と、心から思う。明るい顔で空を見上げることができる。
今の僕にとっては一番好きな本かもしれない。
(事実、入院した時には必ずこの本を持ち込んで毎日読んでいた。)


野良猫ムーチョ −心に吹く風−  ¥1,050 (税込)
野良猫ムーチョ (U)−愛を求めて− ¥1,260 (税込)



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