
数年前、桜井亜美の処女作「イノセントワールド」が発売された。高校生の性と愛、夢と現実、希望と絶望がリアルに書かれていた。カバーの折り返しの、作家紹介には出身地しか書かれていない。主人公が「アミ」という名前だったことから、実体験ではないかということで話題になった。
その頃僕は、文学雑誌や書籍情報誌を読んでいなかったため、何気にあらすじに惹かれて手に取っただけの桜井亜美の小説だった。謎が謎を呼んで更に話題になったというのを、後になって出版社に勤める友人から聞いた。桜井亜美の正体は未だに謎に包まれたままだ。
でも、そんなことどうでもいい。ただ、「桜井亜美」という作家の小説が読みたいと思う僕が存る。
彼女の小説を読むようになって、自分の中で確実に変化を感じる時がある。いろんなもので、自ら八方ふさがりにして、自ら自分に沢山の足枷をつけていた僕に気がつく事が出来た。そしてそんな自分を大切に出来るようになってきた。必要ない足枷ははずしてもいいんだと解ったから。
年代的な考え方の差もあるから、まだまだ周りの人たちには理解してもらえそうにもなくて、同年代の友人たちには「今時」とか「若い」とか「都会人」って言葉に変換されてしまう。
けど、僕にとってはこれが僕なんだと言えるようになっただけでも、随分心が安定したと想う。
桜井亜美の小説は、殆どが文庫での書き下ろし。それはやっぱり、若い世代に読んで欲しいと言う事だと思うんだ。そして、僕みたいな極貧活字中毒者にとっても嬉しい事だ。
それまで僕が気に入っていた作家の本というのは、どれもハードカバーで発行してから2年前後経たないと文庫として発売されない。読みたければハードで買えばいいんだろうけど、やっぱりハードカバーは金額的にも辛いものがある。
だからこそ余計に桜井亜美の小説に夢中になってしまうのかもしれない。500円前後で愛の溢れたメッセージを読む事が出来る。
そう、桜井亜美の綴る言葉には愛がある。悩みさまようTeenagerに光をさしてくれると思う。彼等と同じ言葉で、同じ感性で。見下ろしたりなどせず同じ高さの視線で伝えてくれてる事があると思う。
僕はあいにく年代がずれてるけど、それでも救われることがある。・・・年代はきっと関係ないんだろうね。同じような感性、考えを持ち合わせ、悩んだり迷ったり怯えたりしている全ての人に僅かでも光をさしてくれると想う。
桜井亜美の言葉は押し付けるだけの大人の言葉とは違って、等身大の孤独、愛、やりきれなさや優しさを教えてくれると思うんだ。
誰だって特別じゃない、誰だって誰かの特別になりたくて悩んでる、さまよってる。最後は一人だと知っているからこそ、誰かと繋がっていたいという想い。誰もが通り過ぎる世代。
彼女の小説に出てくる登場人物はみんな、その辺にいる誰か、友達だったり、恋人だったり、あなただったり。僕でさえも、先日小説の中に、僕の分身を見つけた。何処かでまだ年代が違うって思ってた部分があっただけに、それはショックと嬉しさが比例した感じだった。
忘れてしまった人たち、環境が今と違うからって蔑むことしか、拘束することしか出来ない大人たちに追いつめられてる心。自分自身さえも見つめられずに怯える心にそっと響く沢山の愛ある言葉たち・・・・。
僕は桜井亜美の小説を読んで、自分が求めていたものを思い出した。
行き場をなくして身動きさえ取れなくなってる心があるのなら「ここにおいでよ」って、「そのままでいいんだよ」って微笑んであげたかった。そう、追いつめられた苦しさを僕は知ってるから。
僕に何が出来るってわけじゃない、ただ、苦しみを少しでも楽にしてあげられたら、笑顔が少しでも増えたらいいな・・・・ってね。
今でも、いろんなものに救われ続けている僕だけど、桜井亜美に同じ匂いがしたのは気の所為・・・かな?
ということで、桜井亜美の公式サイトが出来た(1999)のと、最近頻繁に新刊が発行されてるので、桜井亜美を今回オススメとして書いてみました。
因みに、処女作の「イノセントワールド」は主演:竹内結子で映画にもなってます。現在はレンタル開始されてます。この映画もなかなかイイカンジなので、是非見てみてください。
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